製造業の経理の仕事とは?一般の経理との違いや求められるスキルなどを解説

エラメク編集部
2025年4月11日 10:49
製造業における経理の仕事は、原価計算の業務があるなど、一般的な経理の仕事にはない業務が含まれているのが特徴です。本記事では、経理の仕事内容をはじめとして製造業の経理の仕事の特徴を紹介します。加えて、必要な知識、おすすめの資格などを解説しますので、参考にしてください。
製造業にも経理の仕事がある

製造業というと、工場内での製品製造の仕事を連想する人が多いのではないでしょうか。確かに製造業では製品の製造は重要な業務の一つですが、その他の業種として経理の仕事もあります。ただし、製造業での経理の仕事は、他業種の経理とは異なる仕事が含まれることがあります。
経理の主な仕事内容

経理はどのような仕事を担当するのか、まずは経理の主な仕事内容からご紹介します。
日時業務
日次業務とは日々のお金の流れを管理する経理処理業務です。領収書の整理や会計ソフトを利用した伝票作成や帳簿への記帳、現金残高のチェックや経費の精算や現預金管理管理なども行います。
月次業務
月次業務は、文字通り月単位での会計処理や財務状況の取りまとめなどを行います。原価計算のほか、給与計算や保険料納付などの業務など、月単位で行うべき業務を担当します。
具体的には、月の前半に請求書の発行・受領、源泉所得税や住民税の納付、経費精算や給与計算などを行います。月の後半で取引先への支払いや請求書作成、取引先との間入出金確認、社会保険料納付などを行うなど、1ヶ月の間で異なる業務を行うこともあります。
年次業務
年次業務は1年間のお金の流れの記録の総まとめとして、年次決算や税金申告・納税などの重要な業務が含まれます。特に納税に関する業務は、事業年度終了日翌日から2ヶ月以内に行わなければなりません。年次業務は、法律で義務付けられている点が日次業務や月次業務とは大きく異なる点です。
製造業の経理と一般的な経理の仕事内容の違い

製造業の経理は、一般的な企業の経理と共通する仕事内容もありますが、製造業の経理は「工場経理」とも呼ばれることがあり、一般的な経理とは異なる仕事内容があります。
原価計算を行う
一般的な経理業務にはない製造業の経理業務で特徴的な点が、原価計算を行うことです。原価計算とは、製品を製造する工程で発生する費用を計算し、製品を製造するためにかかるコストを計算する業務です。製品製造にかかる費用には、原材料費や加工費のほか、設備費や人件費、家賃や水道光熱費など多岐にわたります。
原価を正確に把握することは、モノを作って販売するために必要な販売価格の設定や工程の効率化、財務状況の報告などに必要な項目であるため、工場での製品製造から企業の経営に至るまで重要な業務となります。
製造業に関する専門知識が必要
一般的な経理にはない原価計算業務が含まれる製造業の経理の仕事では、製造業に関する専門的な知識が求められます。自社で製造する製品の製造工程を把握していなければ、正確な原価計算ができなくなるからです。もちろん、経理の知識は必要ですが、さらに製造に関する知識を身に付ける必要があります。
製造業の経理に求められるスキル

経理の仕事は専門知識が必要なので、一定のスキルが求められます。製造業で経理の仕事をするには、主に以下に挙げるスキルが求められます。
経理の知識
製造業の経理でまず基本となるのは、一般的な経理の知識です。製造業であっても、当然ながら簿記などの経理の基本的な知識は求められます。
社内のお金の流れを把握するため、一連の経理業務に関する知識が必要となるほか、製造業の経理に必要な原価計算を行う場合も、経理の知識が役立ちます。製造業の経理業務に関わる知識がない場合でも、経理の基礎ができていれば新しい知識も身につけやすくなるでしょう。
原価計算に関する知識
前述の通り、製造業の経理業務で特徴的なのが、原価計算業務を行う点です。一般的な企業での経理業務では担当しないことが多いでしょう。そのため、製造業の経理業務に就くには原価計算に関する知識が必要です。
製造に関する知識
製造業の経理業務を担当する従業員は、工場での製造業務に直接関わることは少ないでしょう。しかし、製造に関する知識がなければ、原価計算の際に取り扱う内容を理解できなくなってしまいます。直接製造に関わることはないとしても、自社で取り扱う製品やその製品の製造工程の基本などは知っておくべき知識です。
工業簿記の知識
簿記は経理業務を行う上で身につけておくべきスキルですが、さらに製造業での経理業務では工業簿記の知識が必要となります。
工業簿記では、一般的な商業簿記にはない製造途中の段階にある製品を意味する「仕掛品」や「材料」、「製品」といった項目を取り扱います。商業簿記のみでは把握できない情報が出てくることや、適正な販売価格を把握できなくなることなどから、製造業の経理では工業簿記の知識が求められます。
製造業で経理として働くのにおすすめの資格

経理の仕事は必ず資格が必要な仕事ではなく、未経験者でも働きながらスキルを身につけて資格を取得することは可能です。しかし、製造業は一般の経理とは異なる業務が含まれるため、資格を持っている方がスキルを証明でき即戦力となることが期待できます。
では、どのような資格を持っていれば製造業の経理で有利となるのか、おすすめの資格は以下の3つです。
日商簿記検定
経理の資格はさまざまな種類がありますが、その中でも日商簿記検定は日本商工会議所と各地の商工会議所が主催する、簿記の検定試験の中で最もよく知られている資格です。
日商簿記検定は後述する日照原価計算初級に加えて、旧4級にあたる簿記初級と1〜3級の5種類があります。一般的には、入門編にあたる3級から受験することが多く、最も難易度が高い日商簿記1級は合格率が8〜10%の難関資格とされており、高度な簿記の知識を証明できます。
日商原価計算初級
日照原価計算初級は2018年からスタートした、日商簿記検定の中でもまだ新しい資格です。原価計算の基礎を理解し、業務に活かすことを目的としています。
簿記2級の工業簿記に関する試験内容の一部と重複する内容であるため、日照原価計算初級を取得していると、日商簿記検定の上位資格取得を目指すステップにもなるでしょう。
TOEIC
英語のコミュニケーション能力やビジネスに使う能力を証明できる資格です。製造業は海外に生産拠点を置いているケースが多く、製造した製品を国外で販売することも少なくありません。そのため、英語力があれば製造業の経理でも十分に活かすことができます。
TOEICはスコアで英語力が示されますが、ビジネスレベルに達していることを証明できるスコアの目安は、英検準1級レベルにあたる800点です。
製造業の経理に向いている人

製造業の経理は、他の製造業の仕事や一般的な経理の仕事とは異なる内容が多いという特徴があります。そんな製造業の経理に向いているのは、以下に挙げる特徴を持つ人です。
細かな作業が得意な人
経理は、お金を1円単位で管理する必要がある仕事です。数字が合わない場合は原因を追求しなければならないため、大雑把な人には向いていません。細かな作業でも、根気強く業務を進めることを得意とする人が向いています。数字の取り扱いが必須の仕事となるので、細かな作業の中でも数字が得意な人の方が経理に適しているといえるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
経理の仕事はデスクワークが主で、人との関わりが少ないと思われがちですが、税理士や会計士とやり取りをする機会があります。他の従業員の経費計算に関する問い合わせに答えるのも経理の役割なので、コミュニケーション能力が高い人の方がスムーズにやり取りができるので製造業の経理に向いています。
単調な作業を続けられる人
経理の仕事はデスクワークが多く、比較的単調な仕事が続きます。数字を取り扱う仕事であるため、集中力も必要です。コミュニケーション能力が必要な仕事ではあるものの、普段の仕事はどちらかというと一人で黙々と行う内容が多いため、単調な作業でも集中して続けられる人が製造業の経理に向いています。
製造業の経理として働くには?

製造業の経理として働くために必須の資格や経験は特にありませんが、スキルや経験がある人が就職や転職のときに有利です。
資格を取得する
資格の取得は、製造業の経理として働くためのスキルを証明する方法となります。特に日商簿記検定は広くスキルを証明できる資格なので、製造業の経理として働く場合は取得しておくことをおすすめします。
製造業の経理では特有の原価計算が発生することから、上位資格とまではいかずとも日商原価計算初級を取得しておくといいでしょう。
他業種の経理から転職する
まったくの経理未経験者が製造業の経理に転職することは、ある程度の専門的な知識が求められるためハードルが高くなる可能性があります。しかし製造業の経理経験がない場合でも、他業種で経理の経験があるなら転職のチャンスは十分にあります。経理の基礎がきちんとできていれば、製造業の経理でも活用できるからです。
製造業に関する基本的な知識を習得していれば、他業種からの転職でも有利になるでしょう。
専門性が求められる製造業の経理職

製造業の経理は一般的な経理とは異なる業務が含まれます。経理の知識やスキルはもちろん、製造業に関する専門的な知識が求められます。未経験から始めることはハードルが高いですが、経理の基礎的な知識やスキルがある人なら製造業の経理として活躍が期待できるでしょう。