運送業界2024年問題とは?ドライバー志望者が押さえるべきポイント

エラメク編集部
2025年8月25日 19:34
2024年4月から始まった「働き方改革関連法」の適用により、運送業界では労働時間規制やドライバー不足が顕在化し、物流全体に大きな影響を及ぼすといわれています。本記事では、その背景や影響、企業の対策、そしてドライバー志望者にとっての意味をわかりやすく解説します。
運送業界2024年問題が生まれた背景

2024年問題の根底には、国による働き方改革と業界特有の慢性的なドライバー不足が存在します。ここではその2つの要因を詳しく解説します。
働き方改革関連法と労働時間規制
2024年4月から、トラックドライバーに対しても「時間外労働の上限規制」が導入されました。
残業は年間960時間までと定められ、これまでの長時間労働が常態化していた業界に大きな変化をもたらしています。
この法改正は過労死防止や健康維持の観点からは重要な取り組みですが、一方で残業によって収入を得ていたドライバーにとっては、収入減少の懸念も生まれることになります。
深刻化するドライバー不足
国内物流の約9割を担うトラック輸送は、日本経済を支える基盤です。しかしドライバーの70%近くが40代(※)で、高齢化と若手不足が進んでいます。
新規参入者が少ない理由として、長時間労働やきつい勤務環境のイメージが挙げられます。2024年問題はこの人材不足をさらに加速させる可能性があり、業界にとって深刻な課題といえるでしょう。
※国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」参照
2024年問題による主な影響
2024年問題は労働環境の改善を進める一方で、収入や輸送体制、企業経営に大きな影響を及ぼしています。
労働時間制限による収入面の変化
長時間労働が制限されることで、残業代や歩合で収入を増やしていたドライバーの給与が減少する懸念があります。
一方で、企業は人材流出を防ぐために基本給の引き上げや給与体系の見直しを進めており、安定した収入が得られる仕組みが整えられつつあるのも事実です。
長距離輸送から地域輸送へのシフト
従来の「東京から九州まで一人で走る」スタイルは労働時間規制により困難になります。
そのため、輸送は区間ごとに分割し、リレー方式で対応するケースが増加。これにより地域輸送や中距離輸送のニーズが高まり、生活圏内で働きたい人には新たな働き方の選択肢となるでしょう。
企業経営と雇用環境への影響
企業にとっては、効率化やコスト削減が急務となります。改善に取り組まない企業は人材不足や競争力低下に直面し、業界再編が進む可能性もあります。
一方で、待遇改善や最新技術導入を進める企業は、志望者にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
ドライバーに起きる変化

ドライバーの働き方は大きく変化し、待遇や環境の改善、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が広がっていきます。
待遇や給与の見直し
企業はドライバー確保のため、給与体系を再構築しています。歩合制から固定給へ移行する流れや、賞与・福利厚生の強化など、安定して働ける仕組みが広がっています。
休息時間の確保と労働環境改善
規制導入により、しっかりと休息を取る仕組みが整い、心身の健康維持が可能になります。
過労運転のリスクが減少することは、長期的に安心して働ける大きなメリットといえるでしょう。
働き方の多様化
共同配送や地域輸送の拡大により、日勤のみ、週休二日、時短勤務など、柔軟な働き方が実現しやすくなります。家庭との両立を重視する人にとって、大きな追い風となります。
運送会社が取り組む主な対策
企業は2024年問題を乗り越えるため、効率化や新しい物流体制づくりに積極的に取り組んでいます。
ITとDXによる効率化
AIを活用した配車システムやルート最適化ツールが導入され、無駄な走行を減らし効率的な運行が可能になっています。
こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展は、ドライバーの負担軽減にもつながります。
共同配送やモーダルシフト
企業間で配送を共同化する取り組みや、鉄道・船舶への切り替えである「モーダルシフト」が進展しています。
これにより、ドライバー不足を補いながら環境負荷も軽減できるという利点があります。
新人教育と人材確保の強化
若手や未経験者を採用しやすくするために、免許取得支援や研修制度を整える企業が増えています。また、女性や外国人の採用にも積極的で、業界の多様化が進んでいます。
ドライバー志望者が知っておくべきポイント

ドライバーを目指す人にとって、2024年問題は新たなチャンスといえます。そのため会社選びやスキル習得の視点を持つことが大切です。
2024年問題をチャンスに変える視点
「長時間働いて稼ぐ」時代から「効率的に働いて長く続ける」時代へとシフトしています。
健康的で安定したキャリアを築ける機会と捉えることで、自分に合った働き方を選びやすくなるでしょう。
将来性のある会社選びの基準
給与額だけでなく、DX推進度や福利厚生、教育制度の充実度が重要な判断材料となります。安定した輸送需要を持つ地域密着型の企業は、安心して働ける選択肢といえます。
キャリアアップにつながる資格やスキル
大型免許や運行管理者資格に加え、フォークリフトや危険物取扱資格もキャリアの幅を広げます。
今後はデジタルツールの活用スキルも必須となるため、早めに学んでおくことが有利に働きます。
ドライバー志望者にとっての2024年問題
2024年問題は業界全体に大きな変革をもたらしますが、ドライバーにとっては労働環境改善や働き方の選択肢が広がるチャンスでもあります。志望者は企業の取り組みや将来性を見極め、自分に合った働き方を選ぶことが重要です。物流を支える重要な役割を担う職業だからこそ、今後の変化を前向きに捉え、長期的なキャリア形成につなげていきましょう。