運送業で取るべき資格とは?必要性や取得方法も徹底紹介

エラメク編集部
2025年6月24日 11:33
運送業での仕事に就きたい場合は、運送業に関連する資格を保有すると様々な面で役立ちます。現場での仕事だけでなく、管理業務においても資格を持っておくことでキャリアアップや専門的な業務に従事できるといったメリットがあります。本記事では、運送業で取るべき資格や資格取得におけるメリットについて解説します。
運送業の種類

運送業の正式名称は「貨物自動車運送事業」となっており、主に以下の3つの事業に分類されています。
- 一般貨物自動車運送事業
- 特定貨物自動車運送事業
- 貨物軽自動車運送事業
ここでは、上記3つの事業について解説します。
一般貨物自動車運送事業
一般貨物自動車運送事業とは、トラックを使用して荷主のもとに荷物を届ける事業のことです。一般的な運送業が該当するもので、荷主から依頼を受けて運賃を受け取るケースはこの事業にあたります。運送に使用できる車両は「小型貨物車」や「普通貨物車」、冷凍食品や石油などを運ぶ「特殊車」などです。事業を始める際は運転手を十分に確保することや「運行管理者」と「整備管理者」の資格を保有している人が必要です。
特定貨物自動車運送事業
特定貨物自動車運送事業とは、特定の荷主に対して有償で荷物を運送する事業を指します。複数の荷主を担当することは不可能となっており、荷主に代わって輸送業務を代行する形となります。この事業を担当している車両は、車両に荷主企業の名前や広告がデザインされている点が特徴です。
貨物軽自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業は、荷主の荷物を軽自動車や二輪の自動車を用いて運ぶ事業のことです。個人で軽自動車を使用して配送しているケースやバイク便などがこの事業に該当します。軽自動車や125ccを超えるバイクを使用して宅配飲食輸送サービスを行う場合は、貨物軽運送事業の届出が必要です。
運送業の仕事に必要な運転免許

運送業ではトラックを使用して荷物を運びますが、その際に必要なのが運転免許です。運転免許は使用する車両によって異なっており、受験資格や取得に必要な費用も異なります。ここでは、運送業に必要な運転免許の特徴について解説します。
普通自動車免許
普通自動車免許とは、日本国内の公道を自動車や原動機付自転車で走行する際に必要となる運転免許です。2017年3月12日以降に普通運転免許を取得した場合、以下の車両を運転できます。
- 車両総重量3.5t未満、最大積載量2t未満、定員10名以下の普通自動車
- 全長4.7m以下、車幅1.7m以下、車高2.8m以下、最高時速15km/h以下の小型特殊自動車
受験資格 | 18歳以上 |
費用 | 約25〜33万円 |
取得方法 | 自動車教習所を卒業後、運転免許試験場にて本試験を受験し合格 |
準中型自動車免許
準中型自動車免許で運転できる車両は、車両総重量7.5t未満、定員10人以下の車両となっており、2tトラックや3tトラックが該当します。個人向けの宅配業務や冷凍車、建築資材用のトラックを運転する場合は準中型自動車免許を取得すると良いでしょう。
受験資格 | 18歳以上 |
費用 | 約18〜44万円 |
取得方法 | 自動車教習所を卒業後、運転免許試験場にて本試験を受験し合格 一発試験にて適正試験と技能試験に合格 |
中型自動車免許
中型自動車免許は、車両総重量7.5t以上11t未満、最大積載量4.5t以上6.5t未満、定員11人以上29人以下の車両を運転するために必要な免許です。4tトラックや6tトラックが該当し、ダンプやミキサー車の運転も可能です。
受験資格 | 20歳以上 準中型・普通・大特免許のいずれかを取得しており、経歴が通算2年以上 |
費用 | 約10〜14万円 |
取得方法 | 自動車教習所に通い、技能卒業試験に合格 運転免許試験場にて技能試験に合格 |
大型自動車免許
大型自動車免許は、車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上、定員30人以上の車両を運転する際に必要です。トラックだけでなくダンプカーやタンクローリーなどの大型車両の運転が可能です。視力が裸眼またはメガネ・コンタクトレンズで両眼0.8以上、片眼0.5以上あることが条件となっています。
受験資格 | 21歳以上 準中型・普通・大特免許のいずれかを取得しており、経歴が通算3年以上 |
費用 | 約25万円 |
取得方法 | 自動車教習所に通い、本試験に合格 運転免許試験場にて一発試験に合格 |
けん引免許
けん引免許とは、けん引装置が搭載されている大型自動車や中型自動車、準中型自動車などが、車両総重量が750kgを超える自動車をけん引する時に必要な運転免許です。車両総重量は車両の重量と最大積載量、乗車定員を乗じた重さとなっており、750kgを超えるとけん引免許が必要となります。
受験資格 | 18歳以上 二種・大型・中型・準中型・普通・大特免許のいずれかを取得していること |
費用 | 約15万円 |
取得方法 | 自動車教習所に入校 自動車教習所の合宿免許に入校 運転免許センターの一発試験に合格して取得 |
運送業に有利な資格5選

運送業において、取得していると仕事に有利な資格があります。ここでは、仕事の幅を広げられる資格を5つ紹介します。
1. フォークリフト運転技能講習
物流会社の倉庫やヤードで荷役作業を行う際はフォークリフトが必要なほど、物流会社にとっては需要の高い資格です。フォークリフトの資格を持っていることで物流会社での仕事の幅が広がります。資格を取得するためには学科講習と実技講習を受ける必要があり、それぞれの試験に合格する必要がありますが、他の資格よりも難易度は低めです。
受験資格 | 18歳以上 |
費用 | 1万6,000円〜4万円 |
取得方法 | 学科講習と実技演習を受けた後、それぞれの試験に合格する |
2. 玉掛け技能講習
玉掛けとは、クレーンのフックに荷物をかけたり外したりする作業のことで、この操作を担当する際に必要な資格が「玉掛け技能講習」です。使用するクレーンの最大吊り上げ荷重が1t以上が該当し、3日間で玉掛けに関する知識や方法について学びます。
受験資格 | 18歳以上 |
費用 | 2万円〜4万円 |
取得方法 | 学科講習と実技演習を受けた後、それぞれの試験に合格する |
3. 危険物取扱者
危険物取扱者とは、一定量を超えるガソリンやアルコールを取り扱う際や取り扱いに立ち会う際に必要な資格です。「丙種」「乙種」「甲種」と3つに分類されており、それぞれ取り扱える危険物も異なります。また「丙種」と「乙種」は一定の条件を満たすと一部科目の受験が免除となります。
受験資格 | 乙種・丙種:誰でも受験可能 甲:大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者など |
費用 | 丙種:4,200円 乙種:5,300円 甲種:7,200円 |
取得方法 | 試験科目ごとの成績が各60%以上となっていること |
4. 衛生管理者
衛生管理者とは、50人以上の従業員がいる場合に必要となる資格で、仕事中の労働災害や事業場の衛生管理、従業員の健康管理などを担当します。衛生管理者の資格を持っている人は、事業場の設備などを視察するほか、トラブルが発生した際の処置などを行います。
受験資格 | 学校教育法による大学(短期大学を含む。)又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験を有する者など |
費用 | 第一種衛生管理者・第二種衛生管理者ともに8,800円 |
取得方法 | 安全衛生技術センターで行われる試験に合格 |
5. 包装管理士
包装管理士とは、梱包や包装の技術を身につけるために設けられた資格で、毎年400名程が受講しています。「生活者包装コース」と「輸送用包装コース」に分けられており、各コースに沿った講義を受けた後に行われる筆記試験と面接試験に合格する必要があります。
受験資格 | 高校卒業以上の基礎学力を有する22歳以上で、包装関連業務を受講時までに満3年以上経験し、所属事業所(代表者もしくは上司)の推薦がある者など |
費用 | 一般:543,400円 法人会員・個人会員:341,000円 |
取得方法 | 3ヶ月間の研修後に行われる試験に合格 |
運送業の管理に必要な資格7選

運送業では倉庫の管理などマネジメント業務を担当するケースも多くあり、その際に必要な資格も存在します。ここでは、運送業の管理に必要な資格を7つ紹介します。
1. 倉庫管理主任者
倉庫管理主任者は、施設管理や労働災害の防止、従業員を対象とした研修などを担当する資格で、企業は倉庫管理者を選任することが義務付けられています。受験資格や資格試験は特になく、倉庫管理主任者講習を受けることで、誰でも倉庫管理主任者の資格を取得できます。
受験資格 | 特になし |
費用 | 約12,000円 |
取得方法 | 倉庫管理主任者講習を受講 |
2. 物流経営士
物流経営士とは、物流コンサルタントとして業務の効率化や輸送品質の向上を目的とした資格です。授業時間は110時間と長く、受講期間には宿泊研修や企業見学などがありますが、経営の基礎から物流の方向性まで体系的に学ぶことができます。
受験資格 | 都道府県トラック協会に加盟する会員企業に所属し、貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業又は物流部門に関連する業務に2年程度の実務経験を有する者など |
費用 | 一般:400,000円 会員:350,000円 |
取得方法 | 物流大学校講座で規定単位を取得後、修了論文の提出と試験に合格 |
3. 運行管理者
運行管理者は、ドライバーの乗務割の作成や乗務記録の管理、ドライバーの指導監督、安全に関する指導などを担当する際に必要となる資格です。安全に運行するための判断力と、ドライバーに的確に指示を行う力が求められます。
受験資格 | 特定第⼆種貨物利⽤運送事業者の事業⽤⾃動⾞の実務経験が1年以上など |
費用 | 約6,800円 |
取得方法 | 運行管理者試験に合格 事業用自動車の運行管理に関して5年以上の実務経験を有し、その間に講習を5回以上受けていること など |
4. 物流技術管理士
物流技術管理士は、物流やロジスティクスに関する専門知識やマネジメント力を有し、物流の効率化を図ることを目的とした資格です。物流業務において、商品の在庫管理や輸送・配送プロセスの分析を行い、適切に運用する役目を持っています。
受験資格 | 物流に関する基本的な用語を理解しており、物流の実務経験が2年以上ある方 「物流技術管理士補」の有資格者 |
費用 | 一般:605,000円 協会会員:495,000円 |
取得方法 | 「物流技術管理士資格認定講座」を受講した後、客観試験・論文試験・面接試験に合格 |
5. ロジスティクス経営士
ロジスティクス経営士は、経営の視点からロジスティクスの役割を捉え、事業やサービスの企画・実行、新たな戦略の立案などを担当できる人材の育成を目的とした資格です。経営者目線を常に持ちながら考え、企業の課題を見つけられるような人材になることが期待されています。
受験資格 | 5年程度のロジスティクス関連の実務経験がある部長職クラスまたは部長職候補、幹部候補 物流技術管理士または国際物流管理士の資格を取得後、実務を3年間経験した幹部候補 |
費用 | 一般:605,000円 会員:495,000円 |
取得方法 | 14日間の講義を受講し、面接試験に合格 |
6. グリーンロジスティクス管理士
グリーンロジスティクス管理士は、二酸化炭素の排出量算出や資材リユースといった、環境に配慮した倉庫運営について学びます。受講期間は約6ヶ月と長期ですが、省エネ活動についての知識を学べる点が特徴です。
受験資格 | ー |
費用 | 約300,000円 |
取得方法 | 資格認定講座を受講後、課題レポートの提出や試験に合格 |
7. ロジスティクスオペレーション
ロジスティクスオペレーションとは、ロジスティクス分野に特化した資格です。試験では物流の概念や物流管理、物流システム管理、物流情報システムなどが範囲となっています。3級と2級に分けられており、3級では自ら問題意識を持って業務を遂行できるかをチェックできる人、2級ではチームの中心として自ら改善提案できる人が求められます。
受験資格 | 特になし |
費用 | 3級:7,920円 2級:8,800円 |
取得方法 | 中央職業能力開発協会が実施する検定試験に合格 |
運送業関連の資格を取得するメリット

運送業には様々な資格がありますが、資格を取得することで得られるメリットには以下のようなものがあります。
- 専門的な知識を身につけられる
- 週入アップが期待できる
- 転職に有利になる
- 将来的な独立や開業に活用できる
ここでは、上記で挙げられているメリットについて解説します。
専門的な知識を身につけられる
資格を取得することで、運送業に関する専門的な知識が身につけられる点は大きなメリットと言えます。担当できる業務の幅が広がるほか、より専門性のある業務を任せられるようになるでしょう。日々の業務の中でも知識やノウハウは身につけられますが、業務の効率化や新しい設備を導入した際にも資格で得た知識を活用できます。
収入アップが期待できる
資格を持っていると資格手当をもらえるなど収入アップにつながる可能性が高くなります。資格手当とは業務に関連する資格を保有している従業員に支払われる手当です。また、資格を活かして業務に取り組むことでキャリアアップによる将来的な収入アップも期待できるでしょう。
転職に有利になる
転職を希望する場合、資格を保有していると転職活動も有利に進められるようになります。企業の中には資格を持っていることを条件としているケースもあり、資格を保有していることをアピールすることで企業に良い印象を与えられるでしょう。転職や再就職を検討する際は、現時点で保有している資格を洗い出して、資格を活用できる仕事を探してみましょう。
将来的な独立や開業に活用できる
運送業に関する資格の取得は、将来的な独立や開業にも活かすことができます。運送業で開業する場合は「運行管理者」や「整備管理者」といった資格が必要ですが、独立前に取得することで、スムーズに開業を進められるでしょう。また、新しく従業員を雇う必要もなく一人で開業することも可能です。
資格を取得するためのコツ

資格を取得すると様々なメリットが得られますが、メリットを得るためにも取得に向けて勉強する必要があります。ここでは、資格を取得するためのコツについて詳しく解説します。
勉強時間を確保する
資格の勉強をするためには、まず勉強時間を確保しなければなりません。仕事をしながら勉強時間を作る方法として「あらかじめ一日の中に勉強する時間を作る」ことが有効です。一日のスケジュールに組み込むことで、その時間に合わせて行動できるようになります。空いた時間に勉強する方法ではほかの事に時間を使ってしまうので、資格試験に臨む際はこの方法を取り入れてみましょう。
資格取得支援を行っている会社を選ぶ
企業によっては、資格取得を支援する制度が設けられています。従業員のスキルアップや業務の効率化を図るために金銭的なサポートを行う制度で、この制度を活用して資格取得を目指してみるのも良いでしょう。主な支援内容には資格取得後に報奨金を支給するケースや、資格手当を支給するケースなどがあります。
運送業におすすめの資格を取得してスキルアップを目指そう

運送業には運転免許だけでなく、フォークリフトや衛生管理者、倉庫管理主任者など多くの資格が用意されています。また、資格によって難易度や受験資格が異なる点も特徴です。担当する仕事によって必要な資格も異なるため、運送業に従事する方はどの資格が必要か調べた上で取得を目指しましょう。