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スポーツの価値で世界を豊かにする。Criacao取締役CSO 竹田が語る「人」を信じる経営哲学

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株式会社Criacao

2025年3月17日 18:20

株式会社Criacao(以下「クリアソン」)は、「スポーツの価値で世界を豊かにする」という理念を掲げ、イベント・研修事業、キャリア支援事業、そして世界一を目指すサッカークラブ事業を通じて、スポーツと社会を繋ぐ様々な取り組みをおこなっています。

取締役CSOの竹田好洋はJR東日本での10年間の勤務を経て、スポーツメディア事業を起業しスポーツビジネスの世界へ転身。創業時のクリアソンにジョインし、現在の事業基盤を築き上げてきました。

竹田の幼少期の経験からクリアソンにジョインするまでの経緯、スポーツビジネスの未来について語る中で、そこには「スポーツの価値で世界を豊かにする」という理念への情熱がありました。

年齢もカテゴリーも関係ない、スポーツが見せてくれた感動と喜び

――竹田さんは、幼少期からスポーツに親しまれていたそうですね。スポーツビジネスの世界へ飛び込もうと思ったきっかけとは?

はい、小学校の頃は少年野球をしていました。近くにプロになった選手もいるような環境でプレーしており、プロ野球選手になるのは難しいだろうなと子供ながらに悟っていましたね(笑)

一方、遊び感覚でやっていたサッカーは得意で「野球選手は無理でもサッカー選手ならいけるんじゃないか?」という淡い期待を抱き、プロサッカーチームのジュニアユースのセレクションを受けに行きました。結果は言うまでもなく、不合格。『井の中の蛙、大海を知らず』でしたね。

中学〜高校時代のスポーツや部活動は苦い経験が多かったのですが、社会人になって始めたフットサルで初めてスポーツの素晴らしさを実感したことが大きな転機でした。

――フットサルでスポーツの素晴らしさを実感されたとのことですが、当時の印象的だった出来事はありますか?

フットサルを通じて、改めてチームの結束力や勝負に対する熱い想いを抱くことができたのです。

フットサルは社会人になってから高校時代の同級生らと始めました。私たちは弱小チームで、選抜メンバーのようなスター選手はいません。卓球部も野球部もいました。そんな私たちが、神奈川県の3部から2部に昇格する入れ替え戦で、強豪チームに勝利したんです。

当時の私は就職してJR東日本で働いていたので、毎晩のように仕事終わりに仲間たちが駅まで迎えに来てくれて、その足で公園へ行き、夜通し練習をしたりしていました。時には仲間の家に泊まらせてもらうこともあったりして。そんな献身的な支えがあったからこそ、私は仕事とフットサルを両立することができ勝利を掴むことができたのだと思います。

私は社会人だったということもあり、この経験から初めて「スポーツの感動を味わうことは、年齢もカテゴリーも関係ない。こういった経験をせずスポーツから離れた人がほとんどなのではないか」と思ったんです。その中でこの感動、繋がりの豊かさをもっと多くの人に伝えたい、そんな想いが芽生えました。

キャリアの岐路で掲げた壮大な夢、クリアソンとの出会いとスポーツビジネスへの第一歩

――JR東日本での安定したキャリアを捨て、起業に至った背景を教えてください。

JR東日本では様々な部署を経験させてもらいました。好奇心旺盛な私にとっては飽きのない時間でした。しかし当時の自分には将来のキャリアパスが見えた気がして、どこか物足りなさを感じるようになってしまったんです。このまま定年まで働き続ける未来を想像した時に「本当にこれでいいのか?」という疑問が湧き上がってきました。

そして2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。なぜこんな世の中になってしまうのか。どうしたら世界中の全人類が笑顔で人生を全うできるのか。20歳になった私は「スポーツで世界平和を実現する」という壮大な目標を掲げ、起業を決意しました。そこから8年後、JR東日本を退職しスポーツと関わる人たちを応援するメディアを立ち上げたんです。

フリーペーパーの制作からスタートし、”働きながらスポーツに打ち込む人たち”を取材して彼らの活動や働き方を紹介していました。

ここで、新たなビジネスモデル構築に成功したのです。それはフリーペーパーやWEBサイトへの掲載を希望するフットサル場やスポーツアパレル企業から、広告費の代わりにフットサル場の無料利用権やユニフォームの提供を受けたのです。集まったこれらの資源を活用し、大規模な大会やイベントを開催することで、収益を上げることができました。

ーーそこからクリアソンへ。代表取締役CEOの丸山氏との出会いを教えてください。初めて会った時の印象はどうでしたか?

丸山とはフットサル活動の後輩を通じて知り合いました。新宿のカフェで初めて会った時は、お互いの理念やビジョン、そして「スポーツを通してどんな未来を描きたいのか」といった根源的なことを3時間以上語り合いましたね。
丸山と話せば話すほど彼との共通点が多く、スポーツで社会をより良くしていきたいというビジョンに深く共感し意気投合しました。

――現在は様々な事業を展開していますが、それぞれの事業領域について詳しく教えてください。

まず、サッカークラブ事業です。世界一を目指して活動するサッカークラブを通じて、スポーツの感動や喜びを地域社会に届けるとともに、若手選手の育成にも力を入れています。

サッカーの力は二つあると考えています。一つは、スポーツを本当に突き詰める教育的価値です。ブラインドサッカーを使った研修のほか、トップアスリートの考え方やマインドセットをビジネスパーソンに伝える研修プログラムを提供しています。スポーツの価値を通じて、ビジネスの世界に新たな視点や価値観を提供することを目指しています。また、その逆で、リーダー教育など経営者やビジネスパーソンの価値観を、体育会学生やスポーツの人たちが学ぶことで伸びていくことも、機会をつくって支援しています。スポーツで育ち、ビジネス界から学ばせてもらった学生が社会人となって様々な経験を積み、またスポーツ界に帰ってくることも起きています。リーダーシップを育てる、ということは、長く力を入れてやってきていることです。

もう一つは、コミュニティハブとしての機能です。クラブのパートナー企業と事業をつくることや地域に貢献する取り組みを行っています。僕らはスポンサーではなく、パートナーと呼んでいます。連携して共に何かを創っていくからです。そして、それによって、僕らの理念が企業の力を使って広がっていったり、同時に、企業や関わる人の素敵な想いが僕らの力を使って広がっていきます。パートナー交流会なども主催して、素敵な人たちと想いが繋がるお手伝いもしています。今は、230社を超えるパートナーと連携し、地域社会の活性化にも貢献しています。

もう一つが、キャリアや人事を支援する事業です。まず、全国の体育会学生の就活を支援しています。様々な業界について学ぶセミナーや、企業の方と繋げるイベントを行うほか、スポーツで身に着けたことをどのように社会で活かすのかなど、個別に相談に乗るのも一つの特徴です。また、企業に対しては、採用支援だけでなく、スポーツを活用した社員への研修や社内コミュニケーションの活性化、人事領域のコンサルティングなども提供しています。比較的新しいところでは、こうした人事の支援をクラブのパートナーである企業にも提供する例が増えてきました。

私たちはスポーツの力を最大限に活用し、様々な事業がかみ合って展開することによって、地域社会を活性化させ、世の中が豊かになり、世界平和に貢献することを目指しています。

クリアソンの成功の秘訣。巡り合わせが生んだ力

――クリアソンがこれほどまでに成長できた要因は何だと思いますか?

起点は「人」「出会い」です。思い描いたような成長ではありませんが、なんとか皆さんに支えてもらいここまで来られたのは、「ご縁」と「行動量」だと思います。

創業時は、何も事業も固まっていない中で「スポーツ界の課題は何か?」と全国行脚しながら沢山のスポーツ関係者にお会いさせていただきました。その出会いの中で、「何が求められているのか」と「僕らが何ができるか」を考えて、体育会学生のリーダー教育、キャリア教育事業も生まれましたし、サッカー関係者に紹介してもらって日本ブラインドサッカー協会とのご縁ができ、視覚に障がいのある選手も講師になる研修を広める仕事をしています。そして、体育会学生として出会ったサッカー選手がJリーグを経験するなどして成長して、クリアソンに入ってきてくれて、J F Lまで上げてくれました。

そうした人の縁が続くのは、常に僕らが理念を語っていたからだと思います。「なぜ、僕らがそれをやるのか」をいつも考えて、語り続けてきましたし、それに共感してくれた人と繋がっていく。体育会学生のリーダー教育で知り合ったメンバーが、今は社員になって、理念の下で事業を進めてくれている例もあります。逆算思考をしていないとは言いませんが、目の前の人に大切に向き合ってきたこと、そのご縁を大切にして何をするのかを考えること、そしてそのサイクルを回し続けてきたことで今に至っていると思います。「行動量」というのは、一般的なPDCAサイクルとは違って、目の前の人を見る、考える、計画を立てる、行動するという流れです。まず計画でなく、人を見る。そして、「考える」のところで、「僕らはなぜこれをやるのか」にはこだわっています。

ーー大きな決断をする際、意思決定の軸となっているのは何でしょうか?

意思決定の軸は「直感」、「世界平和に向かっているか」、「メンバーが幸せか」の掛け合わせです。

役員の会議で、これがセオリーとか、ビジネスの常識というような助言をもらうことがあっても、一般的な企業なら大きなリスクでも、それを疑ってみて、「僕らはやる」という決断を下すこともあります。論理的な思考も重要ですが、最終的には自分たちの心の声に耳を傾けるようにしています。言葉では説明できない感覚的なもの、心の奥底から湧き上がる感情。それらを大切にしています。

人はどうしても過去の経験や価値観といったフィルターを通して物事を判断しがちです。しかし、それらは時に判断を鈍らせ、間違った方向へ導く可能性があります。

大切なのは、自分の内側から湧き上がる感覚、感情、衝動。それらを無視せず、素直に受け入れること。まるでボールを蹴るときのように、言葉では説明できない"感覚"を大切にすることです。

もちろん直感だけで突っ走るわけではありません。その判断は世界平和に向かっているのか、メンバーが幸せか、

ボードメンバーと議論し、多角的な視点を取り入れることで、より精度の高い意思決定に繋げています。ボードメンバーは、それぞれ異なるバックグラウンドと視点を持っているので、議論はとても白熱しますよ。これは互いを尊重し、信頼し合っているからこそできることだと思います。

――数々の挑戦をしてきた竹田さんですが、クリアソンでの経験を通して、ご自身の中で最も大きな挑戦は何でしたか?

私にとってはすべてが挑戦でした。JRでは駅員や運転手などの経験しかなく、クリアソンでは何もかもが初めての経験だったので、毎日が手探り状態で。

クリアソンでの最初の試練は、体育会に所属している大学生へ向けたリーダーシップ教育でした。彼らの前でリーダーシップについて語ることへのプレッシャーは計り知れませんでした。

今思い返すと、これほどまでにプレッシャーを感じていた理由は、当時の自分の年齢や経験値では、体育会系大学生の悩みや苦労を理解するのが相当難しく、彼らのことを理解していなかったからだと思います。社会人としてはJRで電車の運転手をしていた経験しかなく、組織論も学んだことがない、そんな自分に自信がもてなくて彼らに正面から向き合おうとしなかったんだと。

クリアソンを運営する中で事業が拡大し、メンバーへの向き合い方、組織マネジメントも大きな課題となりました。「ベンチャー企業はどこも初めての連続なんだ」と自分に言い聞かせながらも、ジョインしてからの3、4年間は、不安を抱えて毎晩のように涙していましたね。「仲間を失望させていないか」「自分の判断は正しいか」「クリアソンを間違った方向へ導いていないか」と、自問自答を繰り返す日々。こんなことを堂々巡りで考えても、答えは一向に出ませんでした。

対して、代表取締役社長CEOの丸山は伊藤忠商事出身で、経営者と共に仕事をしてきた経験があり堂々としていました。大きな契約を取ってきたり、大手企業の役員の信頼を得たり、仕事の基準の高さを間近で見るわけです。心のどこかで「丸山にはなれない、でも丸山を超えたい」と自分を縛り付けていた部分もあると思います。僕に紐づいている繋がりと言いますか、僕の話を聞いてくれる人も増えてきたので、今では「誰かと比べるものではない」と思えますが、それでも丸山とは比べちゃいますね。(笑)今でもですが、ずっと苦しくもがいていた時期の方が多かったですね。


「スポーツの価値で豊かな社会を」クリアソンのカルチャーと価値観

――クリアソンのカルチャーについて教えてください。

サッカーチームっぽいというか、年齢に関係なく、言いたいことを言える雰囲気があります。その中で、例えて言うと、「得点を挙げる選手と、ユニフォームを用意するマネジャーは同じ価値がある」という考え方は伝えています。社長だから偉い、ということもありません。役割が違っていて、それぞれの101%をやっていることが大事なんです。

あと、考えることが好きな人が多いですね。理念である「スポーツの価値で世界を豊かにする」について、深く考える人が自然と集まってきている印象です。たとえば「豊かさって何だろう?」「自分は何を目指しているんだろう?」といった根源的な問いを常に持ち、それぞれが明確なビジョンや目標を持っているんです。常に「どうすればより良い社会を実現できるか」「どうすれば人々の成長に貢献できるか」を考え続けています。一人ひとりが、自分の理念を持っていることがクリアソンのカルチャーです。

そのため、採用時には「何のために働くのか?」「なぜスポーツなのか」「なぜサッカーなのか」といった問いを投げかけるようにしています。もちろん、完璧な答えを求めているわけではありません。大切なのはこれらの問いについて真剣に考え、自分なりの答えを探し続ける姿勢です。

――採用において、こだわっているポイントは?

まず、応募者の経歴やスキル、実績といった客観的なファクトは見ます。いくら質問への受け答えが完璧だとしても、うわべだけの発言はすぐに剥がれてしまうので、ファクト部分、実際にどんな行動をしてきたのかを正確に見極めるようにしています。その行動から「どういう世の中をつくりたいのか」を確かめています。

もう1つはボードメンバーそれぞれの直感です。私たちのカルチャーにマッチしているかをいい意味で主観的に捉え、感覚的に「なんか違う」と少しでも思ったら立ち止まるようにしています。最終的な判断軸は多数決ではなく、誰かひとりでも「この人を採用した責任は自分が取る」と断言できるかどうかです。

そこに至るまでには、「親の次に、その人のことを良く知っているか」というくらいまで何度も話をします。クラブに加入する選手に対しても同じなのですが、面談が5回以上になることも普通にあります。この人が加わるとクリアソンが良くなるか、とそちらに軸足を置いて考えるのではなく、一人一人が目指していることやつくりたい世界を知ること。そして、それに向かって進んでいく過程において、つまり、人生において、クリアソンにジョインすることが本当に幸せなのか、と面談を重ねる中で考えています。

――クリアソンでは、どのような人材を求めていますか?

世界一という日本では誰も成し遂げたことがないことに向かっているので、嘘かのような高い目標を自ら掲げたり、「それを面白い!」と捉えて行動し続けられる人ですね。例えば、国立競技場で試合を開催します、となった時に、「まず、1万人を目指しましょう」ではなく、「どうやって満員にしましょうか」と言い出して、本気でそれに向かって動けるようなタイプです。

もう一つは、最後の最後までコミュニケーションを諦めない人です。サッカークラブのキャプテン、須藤の言葉を借れば、「絶対に手を離さない人」ですね。組織の問題は殆どが「誤解」だと言われています。オンラインのメッセージのやり取りだけでは誤解が生じて雰囲気が悪くなった時に、オフィスで面と向かって、お互い分かり合えるまで話すことなどは、大事だと思います。そういうところは、スポーツチームっぽいところがあるんですよ。